
頭蓋骨の構造

頭蓋は、15種23個の頭蓋骨のパーツと顔面骨で構成されています。
頭蓋骨の特徴
①脳を保護する
頭蓋骨は軽くて、厚みが薄く、扁平な骨ですが、骨のパーツには円の膨らみがあり、また組み合わさったパーツは「角がない」曲線や曲面を持ちます。そのことから、頭蓋骨には「アールをつける機能(円の半径をつくる機能)」があります。
また、頭蓋骨の断面の中間層には、海綿状(スポンジ状)でできた「板間層」と呼ばれる骨が、クッション性(緩衝材)の役割を果たすことで、外からの物理的な衝撃を吸収します。
それらのことから、骨のパーツ自体の耐久性が向上しています。なお、押す場所にもよりますが、非常に優しい力で頭蓋骨を押した場合は、「骨にたわみ(粘弾性)」をわずかに得られる可能性があります。
②縫合が外からの衝撃を吸収する
頭蓋を構成する、頭蓋骨の部品(パーツ)と頭蓋骨の部品とが隣り合って接合している部分を「縫合」と言います。頭蓋骨は、赤ちゃんであっても縫合により「骨同士がほぼ直接接触」しています。
頭蓋は、外からの刺激(衝撃)に対して、骨同士が接合している「縫合」と「泉門」が振動を和らげることで、脳を保護したり、呼吸に伴う頭蓋の変動を調節したりするダンパー装置と似た役割を果たします。また、縫合と泉門は、パーツが組みあった頭蓋骨が外力の作用を受けた時に、パーツが分解されないように(動かないように)組みあった頭蓋骨を「固定」する役割を果たします。
そのことから、頭蓋骨には、縫合が複雑に屈折した線が分布しています。この骨が連結している線を「縫合線」と言います。頭蓋骨は「縫合」で結ばれることにより、骨同士が直接接触して、互いに影響を及ぼしながら、呼吸に伴う運動をする2つ以上の「連結物体」です。
③弾力(バネ)がある

例えば、ゴムボールを指で押すと少し凹みますが、指を離すと元に戻ります(外力を取り除くと瞬時に元の形状に戻る性質)。
基本的に頭蓋骨を手で押しても、骨の形自体は変わりません。ですが、手の力の強弱にかかわらず、頭蓋を押してみると、頭蓋骨の位置はわずかに動き、手を離すと頭蓋骨は元の位置に戻ります。
これは、頭蓋骨の断面の構造や縫合の存在が頭蓋にわずかな柔軟性を与えているからです。頭蓋や頭蓋骨の縫合は、ほんのわずかに「ばね」のような性質(弾性)をもっています。
そのことから、適度な手の力で頭蓋骨を動かすと、頭蓋は一定の範囲まではわずかに動きますが(わずかに偏位しますが)、骨同士がほぼ直接接触していることから、それ以上は動かないように縫合(縫合線)にロックがかかります。そして、手を離すとロックが解除されて弾力により元の位置に戻ります。
④呼吸に合わせて目には見えない運動をしている

例えば、両手で「頭を抱える」ように頭を触れたままでいると、人によっては「呼吸のしにくさ」を感じると思います。
頭蓋骨は、胸郭の呼吸に合わせて、頭蓋の後頭骨や蝶形骨が基点となり、左右の頭蓋骨を構成する各パーツが協調し合うことで、目には見えない運動を行います。
そして、息を吸った時に、向かい合う左右の頭蓋骨(左右の前頭・側頭・後頭)が、左右横から頭蓋骨の中心に向かって「収縮」する運動と、息を吐いた時に、左右の頭頂骨の中心から左右の側頭骨に向かって「膨張」する運動を行います。
また、息を吸った時に、オデコの中心が突出する運動と、後頭部が前方へ倒れる運動(頭蓋全体が前方へ移動する運動)と、息を吐いた時に、オデコが中心から横に広がる運動と、後頭部が後方への倒れる運動(頭蓋全体が後ろへ移動する運動)が行われます。
つまり、頭蓋は通常、呼吸に合わせて、左右の頭蓋骨が協調して、「形や大きさのバランスを保ちつつ」呼吸の補助をしています。
⑤脳内圧力が頭蓋を保つ
頭蓋は、外側からの外圧と比べて、頭蓋内の内圧力の方が高い状態を保つことによって、頭蓋骨の構造が安定を保っています。
そのことから、頭の施術(ケア)をする際には、手による外からの力が頭蓋内圧力を超えてはならないと考えます。
縫合の特徴
頭蓋骨の縫合には、「粘弾性特性」と呼ばれる弾性(固体のような元に戻る性質)と粘性(液体のようなドロドロとした抵抗)の性質の両方を併せ持つ挙動があります。
弾性は、外力を加えると直ちに変形し、外力を取り除くと瞬時に元の形状に戻る性質です。手の力が頭皮を通過して頭蓋骨に刺激が到達したり、頭皮・筋肉・帽状腱膜・骨を適度に引っ張ったりずらしたりすると、縫合には弾力が発生します。
一方で粘性は、時間に比例した持続的な外力を加えると変形するが、外力を取り除いても元には戻らない性質です。
縫合の短所(弱点)

①骨と骨とが接合している縫合部の断面積の幅が細い。
②新生児~乳幼児の縫合をつないでいる靭帯(結合組織)が軟弱。
③赤ちゃんの頭蓋骨は、骨同士が靭帯でつながっていても。骨と骨との連続性がない(骨と骨との連続性は切れている)。
④大人であっても、骨の扁平が連続している頭蓋骨のパーツと比べると、縫合部の流れにスムーズさを欠いている。そのことから、頭蓋骨のパーツと比べて、骨の断面積は減る。

⑤縫合は外力を吸収するが、意図的に「引っ張る力」、「ずらす力」、「曲げる力(両手で割り箸の中心を割る力)」をかけることに対しては弱い。
※冠状縫合は、骨同士が「縦」、鱗状縫合は「斜め」に近い面で接しています。
⑥頭蓋骨に泉門が存在する新生児~乳児期に、「小泉門」や「前側頭泉門」に連続した外圧を受けてしまうと、その部分が変形するおそれがある。(長期間の連続した、上向き寝、横向き寝、うつぶせ寝)
⑦縫合や泉門や縫合線にかかる応力が高くなる。
材料力学の視点で言うと、外からの刺激が頭蓋骨に到達すると、脳を保護するために、頭蓋骨の内部から手の力と同じ力の「内力」が発生し、外からの力との均一を保ちます。
※内力は別の言い方をすると「応力」と言います。
※応力は英語で stress(ストレス)と訳します。ストレスは、物理的な力による内部の負担を指します。
応力は、「断面積の連続性が切れるところ」、「断面積が減る部分」、「断面積の連続性の間が特に離れている部分」に蓄積しやすく(大きく)なります。
また、頭蓋骨は、成長に伴う脳の拡大によって、縫合部を引っ張る応力がかかります。
頭蓋骨の「骨と骨とをつないでいる靭帯」「縫合」「泉門」「縫合線が分布しているところ」では、外からの衝撃を吸収する一方で、脳の拡大するときの応力や外からの力に対する応力は非常に高くなる状態になります。
応力集中について

⑧縫合・泉門・縫合線に「応力集中」が発生する可能性がある。
例えば、「切れかけの消しゴムや紙」を手で裂いたときに、まずどこから裂けていくのかというと、切れかけの部分から裂けていきます。
また、「きず」や「穴」や「溝」や「亀裂」がある細長い木の棒の端を両手で引っ張ると、きずや穴や溝や亀裂があるところから破壊がはじまり切れます。
これは、材料が引っ張られると局所的に大きな力が集中しやすいためです。これらの現象を「応力集中」と言います。
問題は、構造物にきずなどが存在すると、小さな力でも変形が起きてしまうことです。つまり、傷があることで断面積が減ります。断面積が減ると、その部分の応力は大きくなるため、その分だけ「小さな力」でも破壊されるようになります。
ですが、物理的に矛盾するほどの非常に弱い力でも、大きな力が集中し、変形することがあるのです。そのことから、頭の施術(ケア)を行う際には、応力の現象に細心の注意を払わなければなりません。
頭蓋骨に作用する応力が大きく(高く)なったり、応力が蓄積すると、新たな変形を与えるリスクも伴うことから、様子を見ながら慎重に行わなければならないと考えます。

応力集中は、頭蓋骨の不連続部である「縫合、泉門、縫合線」に発生する可能性があります。そして、新生児~乳児の頭蓋内に応力集中が起こると、応力のエネルギーに耐えられる強度の限界(疲労限度)を超えてしまい、急激な形状変化が発生する可能性があります。